平成十五年(2003)
九月号 (詠:文月)
大梅寺 二句
若葉雨とうに杖突き句碑尋ぬ
句碑の辺にソロ奏でたる草清水
キリストも釈迦も涼しき志功展
鍾景閣
夏座敷箪笥料理に酒添へて
十月号 (詠:葉月)
鎌倉の陶芸家河村又次郎宅
春を盛る皿を返せば其中窯
備前の陶芸家茂谷郁夫宅
裸電球窯入れ急ぐ春の果
栗田焼に活け火の色の薔薇の花
屋久杉の端切れを削る薄暑かな
十一月号 (詠:長月)
縁降りて立壺菫下駄の先
ジーンズに轆轤の散らす春の土
犬の餌に雀群れ居る昼寝時
ニーハウの声朝顔の垣根越し
十二月号 (詠:神無月)
ニューヨークのテロ現場 二句
地下鉄を出てグラウンドゼロの秋
千羽鶴秋の時雨に濡れゐたり
メキシコのカーボ.サンルーカス
波涛越え日の出に急ぐ群れ蜻蛉
義母八十五歳誕生日
茄子の花八十路半ばの庭仕事
一月号 (詠:霜月)
街角の出店に南瓜並びけり
ハロウイーンに走る子等待つ駄菓子皿
バンクーバー
カヤックの紅葉を縫って川下る
平田縫子さん九十三歳誕生日
白髪に好みの帽子秋日和
二月号 (詠:師走)
間引菜を鍋に加へて夕の膳
夕闇に柚子の香満つる台所
足元を見つめて登る草紅葉
締切日せまる夜長に電話ベル
三月号 (詠:睦月)
玄関の煤を払ひて春を待つ
草刈機に踏まれて匂ふ蜜柑かな
長雨に地を染めて散る寒椿
ローズパレード
寒薔薇山車を飾りて年新た
四月号 ー 15周年記念号 ー(詠:如月)
陶芸のえにしに増ゆる年賀状
鼓動聞き轆轤目数へ事始め
屑籠にテイーバック投げ寒の入り
日系二世三世とのゴルフトーナメント
日本語で挨拶交はし初ゴルフ
五月号 (詠:弥生)
轆轤止め見上ぐる窓に木瓜の花
木蓮の散る庭先に爪を切る
アイヌの伝承楽器
流氷やトンコリの音吹き荒るる
風受けて見上ぐる空を鳥帰る
六月号 (詠:卯月)
やぶ地蔵曲れば春の野峯窯
仏塔に春草かをる満寿夫展
スターバック珈琲すすり長閑なり
微風に犬くしゃみして松の花
七月号 (詠:皐月)
三十路にして箱綻びし雛納
畑隅に菜の花そよぎ茎伸ばす
墓地濡れて供花匂ひたつイースター
都忘れ咲く庭に電話とりつぎし
八月号 (詠:水無月)
焼き上げし皿に初生り胡瓜もみ
寄り付きに香る緑や竹の秋
でで虫の通りし跡の光りをり
ゴルフコンペ
くやしさに踏みつぶされしビール缶
九月号 (詠:文月)
生い茂り見向きもされず草苺
夜の闇に月下美人の蒸れ匂ふ
切先に輝く刃文風薫る
げじげじの卵のひそむ植木鉢
十月号 (詠:葉月)
軽やかな音頭囃子に浴衣舞ふ
涼しさや花入れに敷く染絣
苔をむす岩より落つる簾滝
散歩犬好みし道の夏木立
愛犬と戯言交はし夕端居
十一月号 (詠:長月)
身に入むや住み移る娘の空箪笥
利きワインに微酔い渋き村はずれ
山肌の茜に染まりそぞろ宿
子離れて秋刀魚二本に米二合
十二月号 (詠:神無月)
ナイアガラ二句
冷まじや巻き揚がる滝股覗き
滝壷に近ずく小舟水の秋
雨風に打たれ粧ひそめし山
トースターに両手をかざす秋深し
平成十七年(2005)
一月号 (詠:霜月)
朝露に洲鳥片足折りて立つ
団栗を弾いて過ぐるキャデラック
手みやげの松茸匂ふ紙袋
寄り付きの椅子の座狭しななかまど
篳篥に誘はれくぐる萩の門
二月号 (詠:師走)
最夜中に妻と聞き入るくつわ虫
煙り立つ茶筅供養や冬に入る
部屋の灯へ湯気立ちのぼる牡蠣雑炊
年の瀬にいとほしみ刈る薄き髪
三月号 (詠:睦月)
雑踏に鈴の音忙し社会鍋
城崎温泉
鴻の湯や雪ぐらぐらと降り続く
初雪の峰めがけ打つドライバー
侘助の散る音すなり北の窓
四月号 (詠:如月)
打ち粉振り太刀清めたり明の春
スキー行 二句
静けさへ分け入るリフト雪深し
蹴るさまに滑る鋭き雪の壁
吹初の篳篥の音に顰め面
手に息を吹きかけ寒の土捏ねる
五月号 (詠:弥生)
人だかりしてあんこうの吊るし切り
冬の夜や窯を囲みて立ち話
涅槃吹犬の振り向く回り道
ガレージの闇に球根芽吹きをり
窯出でし碗のささやく春の宵
六月号 (詠:卯月)
残雪をきしませ登る羽黒道
雨雲の垂れ春雷に急ぎ足
残雪の遠峰跨ぎて瓦葺く
死の谷に開きて揺るるポピーかな
そよ風に揺れて輝く柿若葉